本来、兵仗の具ですが、衛府の官人が、儀仗に用いましたが、のち実用を離れ装飾性が高く威儀化しました。主に行幸供奉に用いました。
平たい箱に入れ、扇形に矢を配します。矢は、高倉流は15本(落し矢1本)、山科流は22本(落し矢2本)、櫛形の板の内側に間塞(まふたぎ)という紙を差し込みます。
梨地蒔絵・梨地螺鈿……公卿の料
木地螺鈿……公卿・殿上人通用
黒漆蒔絵……殿上人の料
沃懸地……検非違使の料
黒漆無文……六位以下の料
負い方は、流派の相違がはっきりしてからは、高倉流は鏃の方から抜きます。山科流は羽の方から抜くので、後ろから見て左高(高倉流)、右高(山科流)になります。(※隻≒筋≒本)
間塞(まふたぎ)の色は、若年は紅梅、壮年は上側赤・下側白(妻紅)、老年・検非違使は白と、年齢により色が違いました。(妻紅……扇または巻紙などのへりを紅で染めること)間塞は、鏃の重なりの乱れを隠したり、袍の袖のひかかりを防ぎます。黒漆蒔絵……殿上人の料
黒漆無文……地下の料
(平胡簶より軽視され、一般には地下に用いられる)
古くは靫と呼ばれ、同じものでありますが、矢を2本または4本入れると靫、7本入れると壺といわれました。平胡簶に対して壺胡簶といいます。
狩胡簶≒箙 随身及び武家の料に用います。(下級官人含む)
前緒と後緒は、染韋の絎緒を用います。紫韋と藍韋(青韋)の2種類があります。衛府は左方を紫韋、右方を藍韋(青韋)とします。細太刀に準じます。
蝶鳥搦緒は、細い打組の緒、糸組の2条に責輪6個を入れ、先に蝶鳥金具を通し、金銅の蘂(紐・緒などの房のもとにつける飾り)から水晶の露を垂らします。2組ずつ左右4組あります。色は表帯(丸緒)に準じます。近世は紫緂・紺緂です。
- 装束の韋緒
- 帯取・手貫・太刀があります。帯取は如法(もとより)赤韋に対して紫韋・藍韋(青韋)の2種とします。
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前緒で表差羂を作り、落し矢を入れ締めます。鎹金物に前緒の片方を通します。表帯(丸緒)の中に左右(向かって左から)に2本(隻)ずつ矢を入れ、左右6本(隻)中央2本(隻)をつくの紐(凧糸)で留めます。矢を2本ずつ前緒を交互に捻って締めて、右側の鎹金物に前緒を通して縛ります(男結び)。
次に丸緒で締めます。剝板(折板)の間に鏃を挿し込みます。そして矢並みを扇形に広げます。蝶鳥搦緒で諸鉤に括ります。間塞は、裏側を三角形に折り出しません。

落し矢は同じです。前緒の片方を鎹剝板(折板)の間に鏃を挿し込みます。そして矢並みを扇形に広げます。蝶鳥搦緒で諸鉤に括ります。間塞は、裏側を三角形に折り出します。
剝板(折板)/矢配板…杉・桧の材を薄く削いだ板で、平胡簶の箱に入れ矢を安定させる
- 弭
- 公卿は金、殿上人は銀、 地下は銀
- 鳥
- 公卿は梨地蒔絵・梨地螺鈿、殿上人は木地螺鈿・黒塗蒔絵、地下は黒塗無文
- 樺紙巻
- 若年・壮年は紅梅色、妻紅。年齢とともに薄くなり、宿老と検非違使は白
- 巻組
- 公卿は若年は紫薄平、年齢とともに厚細、殿上人・地下は紺厚細
- 握
- 錦・綾(近世は大和錦)
- 弦
- 紫緂・ 楝緂(白、青、白、紫、白の順に交互に配した色の名称)

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